国道485号(松江第五大橋道路)改築(改良)工事大橋川工区大橋川橋梁下部工第2期
三澤 孝(監理技術者)池田 靖司(現場代理人)上村 隆司・上谷 友紀(現場技術員)

【工事概要】
鋼管矢板φ1000・L17.0m・N=26本、RC橋脚2基、仮桟橋工1式、地下水位低下工(スーパーウェルポイント)、汚濁防止工1式、
場所打杭φ1500・L=17.0m・N=6本、土留・仮締切Ⅳ型L=15.0m・N=108枚、その他(防舷材設置、監視船、浮標灯設置他)、
載荷試験工(静的鉛直載荷・水平載荷)、護岸抑止工

対談者:三澤 孝(監理技術者)/池田 靖司(現場代理人)/木村 善信(工務)

木村:今日はお二人に第五大橋下部工について語って頂ます、よろしくお願いします。
三澤・池田:よろしくお願いします!

現場の苦労

木村:この現場は川幅半分を仮橋で封鎖するため、大橋川を利用する全ての関係者の方々との利用調整と航路航行管理には非常に苦労した現場でしたね。

池田:ええ、航路減少区域においては、船舶が航行する際、大橋川と剣先川間の背割堤上に設置した「私設信号(閃光信号)」による航行調整を手動で行ったが、誤操作があってはいけないので非常に気を使いました。

三澤:本当に気苦労が絶えませんでした、それと航路減少区域での魚釣りや水上活動を遠慮していただくため、リーフレットの配布やお願い看板を設置しましたね。

木村:そういえば松江東高のレガッタ部が現場付近で転覆してたの救助したよね(笑)

三澤:そんなこともありましたね(笑)

現場の取組み 工期短縮と環境負荷低減

木村:また、河川内作業は非出水期(10月下旬~6月下旬)の8ヶ月弱が施工期間となる予定でしたが、この年1月に日本三大船神事である「ホーランエンヤ」が開催されるため、1ヶ月早く施工を終える必要がありましたね。

三澤:はい、工期短縮のために様々な工夫を行ないました。
仮橋の設置については、通常鋼材の接合はボルト締めを用いて施工しますが、全ての接合部を狭締金具により締め付ける工法としました。この工法により、仮橋工期の42日から30日に12日短縮しました。

池田:その他にも、橋脚構造物の鉄筋組立作業で、鉄筋を二次製品化(組立作業から据付作業へ)する工夫を行って、通常組立作業工期の16.5日から12.5日の4日短縮したり、日々の工程管理を1日でカウントせず、半日単位で施工の工程を管理した結果、先の短縮日数を含めた工事全体で、30日間の工程を短縮できました。

三澤:大幅な工期短縮ができた結果は、単に労務を費やしたのではなく工事に携わってくれた下請協力業者をはじめ、発注者である島根県高規格道路事務所、地元の皆様方とが一体となり、ひとつのテーマに取り組んで“+α(プラスアルファー)”を生み出した結果と実感しました。

木村:あと、松江第五大橋建設工事の中でも大橋川渡河部の橋脚工事で、宍道湖と中海を結ぶ大橋川がシジミの漁獲地域であることから汚濁水の流出はご法度、特に慎重な施工が必要な工事でしたね。

池田:この工事現場では「環境に優しく。そして、工程を短縮して早く。」という要求に対応するため、様々な工法と工夫を行ない環境負荷低減に努めました。基礎には、鋼管矢板井筒を採用し、なおかつ濁水発生を低減するためスーパーウェルポイント(SWP)工法を用いて井筒内の地下水位を低下させてドライ状態で施工しました。このドライ施工により、掘削時の濁水発生を低減できたことと水中コンクリートの施工が必要なくなり、強アルカリ水の排出も抑制できました。

三澤:あと、鋼管矢板の継ぎ手部からの入水をより少なくするには、施工精度を上げる必要がありましたので、鋼管矢板の導枠・導杭設置と同時に測定架台を矢板施工中心部に設置して導枠の設置精度の向上と矢板の偏心監視施工を充実させ、効果を発揮しました。
鋼管矢板内で発生した濁水は、全て専用排水管で陸上部に送水して、PH処理機と薬品を使用しないろ過式濁水処理機で処理した後大橋川に放流しました。

池田:この濁水処理の監視の結果、大橋川を利用する多くの人々や漁業関係者からの苦情も無く、環境に優しい工事を提供できました。

地域とのふれあい

木村:それと、松江第五大橋事業並びに弊社が受け持つ大橋川工区橋梁下部工事に対するご理解ご協力への感謝として、施工中の建設現場を実際に体感し更に理解を深めてもらう目的で「ふれあいの日」と題して、東津田児童館と協賛しふれあいイベントを開催しましたね。

池田:ふれあいイベントは、建設現場の工事説明と大橋川に架かる工事用仮桟橋を散歩し、弊社イベントスタッフらと一緒に記念撮影を行いました。また、東津田児童館の会場では、カラーコンクリートの手形作りや、建設機械の試乗、顔出し看板での写真撮影、現場施工状況写真の上映、ぬりえなどを行いました。

木村:オリジナル看板のデザインを竹下画伯(土木部社員)が作成され、当時の土木部長吉岡さん(現常務)、加藤さん(現営業部部長)が、隠れた才能に非常に驚嘆されてたよ(笑)

三澤:多彩な人材を擁する土木部です!

木村:ここで作ったカナツ顔出し看板が現在も使用されていることが微笑ましいよね(笑)

三澤:ええ、腰を痛めたかいがありました(笑)

池田:それにイベント当日は、雪交じりの雨の中ではあったものの児童館を利用する親子連れや老人会などの地元住民約80名が参加され、建設途中の現場周囲を見渡しながら興奮を隠せない様子で子ども達は歓声を上げていました。このふれあいイベントを通し、地元住民関係者との親睦を深められたことと事業全体に対する理解へ繋がったと実感しました。

「土木」という仕事

木村:いや本当に松江市民として、第五大橋の完成を渋滞につかまる度に未だか未だかと待ち望んでいましたので、島根県の一大事業の第五大橋の施工に勤めている会社が携わっていた事が非常に嬉しく思っていました。
土木技術者として感じている「土木」という仕事へのやりがい、現場運営などについて考えていることを教えて下さい。

池田:世間には、道路、堤防、護岸、港湾、上下水道といった社会の基盤となる施設がたくさんあります。その施設は土木技術者が施工してはじめて、地域のみなさまに使われています。しかし、地域のみなさまに使われる前に当然ながら発注者に評価されなければなりません。発注者へ高品質な建設物を提供する事に関しては技術者として当然責任をもって取組むべきです。専ら検査での高得点ばかりに気を取られがちではあるが、評価の内訳をみると地域のみなさまから喜ばれる創意工夫を実施する事も非常に大切だと感じています。よって、地域のみなさまから信頼される取り組みを実施することは仕事へのやりがいであり、延いては良好な現場運営に繋がる原点でもあると思います。

三澤:建設業は、注文者からの発注を受けて初めて生産活動を行う“受注産業”です。工事毎に生産現場は異なり、二つとして同じ現場はありません。大量生産は不可能です。
工事現場では、様々な分野の技術者が一体となってモノづくりを行っています。この技術者一人ひとりとの絆・意思(安全管理)、買手の要求事項(品質管理)、生産性の向上(工程管理)を満足できる仕組みづくりが工事現場の運営だと考えています。
今後も携わっていく全ての工事現場を通じて、“モノづくり”の魅力を発信し、建設業の活性化に繋げていきたいと思います。

木村:熱い想いを有難うございました!

三澤・池田:有難うございました!