土木工事における施工の労働生産性の向上を図る技術の試行

カナツ技建工業株式会社を代表とするコンソーシアムは、国土交通省の「施工現場の労働生産性を飛躍的に向上するための革新的技術導入・活用に関するプロジェクト」の公募に応募し、「対象技術Ⅰ:データを活用して土木工事における施工の労働生産性の向上を図る技術」の部門で提案技術が選定されました。

<国交省のPJ紹介ページ http://www.mlit.go.jp/tec/po-con_introduction.html

本コンソーシアムは、山陰道の「静間仁摩道路大国高架橋外下部工事」を対象に、平成30年度末までコンクリート構造物(橋台・橋脚)の出来形管理の効率化等を図る技術を試行していきます。

<図参照 国土交通省 松江国道事務所 >

技術の紹介

期待される効果

橋台及び橋脚を対象とし、コンクリート構造物の出来形管理を3Dデータを活用して高精度化、高効率化するとともに、安全性の向上を図ります。

試行技術の内容

地上型レーザースキャナーを搭載したトータルステーション(以下「TLS搭載TS」という)を使用して構造物(橋台・橋脚)の3次元計測を行い、点群及び隅角点の3次元座標を取得して杭頭及び躯体の出来形管理に利用するとともに、3次元設計データと完成データの座標値の較差による新たな出来形管理方法を提案します。

取得データ

  • ①構造物(杭及び躯体)の3次元設計データ
  • ②TLS搭載TSによる構造物(杭及び躯体)の点群データ

3Dデータとして取得する構造物の点群データから、出来形管理に必要な場所打ち杭の杭径・杭芯、躯体の出来形寸法を求めて従来の出来形管理に活用するとともに、場所打ち杭の杭芯や構造物の隅角点の座標の取得データと3D設計データの同点の座標値との較差からX,Y,Z方向の偏差を求め、新たな出来形管理値として提案します。

試行技術による出来形管理のメリット

  • 視覚情報と隅角点座標情報により設計と出来形の対比が可能
  • データ上どこでも寸法値の計測が可能
  • 出来形項目(厚さ、長さ等)の測定がデータ上で可能
  • 3次元設計データとの対比により、隅角点のXYZ方向の偏差を求めることが可能
  • データの次工程への引継ぎと維持管理への活用
  • 立会、出来形管理写真、出来形図の簡素化が可能

データ取得を始めました

◆ 平成30年12月12日

測定対象:
仁摩インター橋P1橋脚の場所打杭
測定内容:
TLS搭載TSによる3Dスキャニング

データ取得状況

測定後の打合せ状況

◆ 平成30年12月25日

測定対象:
大国高架橋A1橋台の場所打杭
測定内容:
TLS搭載TSによる3Dスキャニング

データ取得状況

◆ 2回のデータ取得作業を終えて

  • 現場での出来形測定作業時間は従来よりも軽減されました。
  • 現場計測作業の安全性が向上しました。
  • 試行技術による計測結果は、出来形管理値として使用できると考えられます。

◆ 平成31年1月11日

測定対象:
仁摩インター橋P1橋脚のフーチング
測定内容:
TLS搭載TSによるスキャニング

◆ 平成31年2月12日

測定対象:
大国高架橋P1橋脚の場所打杭
測定内容:
TLS搭載TSによるスキャニング

◆ 計4回のデータ取得作業を終えて

  • 前回以降、1月と2月にそれぞれ1回ずつデータ取得しました。
  • 場所打杭のスキャニングに関して効率的なデータ取得方法が得られました。
  • フーチングの出来形測定に関しては、試行技術と従来技術で作業時間に大きな差はみられませんでしたが、これは従来技術の測定箇所が少ないためであり、今後躯体の出来形管理では軽減が見込まれると予想しています。

◆ 平成31年3月データ取得について

前回2月に引き続き、3月に残りのデータ取得を行い、予定どおり終了しました。

測定対象:
大国高架橋A1橋台 フーチング・躯体
   〃 A2橋台 場所打杭
   〃 P1橋脚 フーチング
仁摩インター橋P1橋脚 躯体
測定内容:
TLS搭載TSによる3Dスキャニング

大国高架橋A1橋台(フーチング・躯体)         大国高架橋A2橋台(場所打杭)

大国高架橋P1橋脚(フーチング)            仁摩インター橋P1橋脚(躯体)

◆ 全データ取得を終えて

  • 3次元データを使用した出来形管理は、現行の管理基準に対して精度的に使用可能であることが確認できました。
  • 従来方式の出来形管理に対し、工数(人数×作業時間)で比較すると、場所打杭、フーチング、躯体で最大50%以上低減しました。
  • 出来形管理作業に係る人員は最大2人で可能であり、従来方式よりも低減しました。
  • 本試行で取得した3次元データを活用することで、構造物管理等に応用できることがわかりました。その一例を示します。

※3次元設計データ(CIM)と出来形点群データの融合    上部拡大

      



【審査結果が公表されました】


平成31年4月4日に建設現場の生産性を向上する革新的技術の評価結果が公表され、選定された33件の技術の各試行内容がA~Dで評価されました。カナツ技建工業株式会社を代表とするコンソーシアムによる本試行は「A」(目標は達成され、十分な研究成果があった)と評価されました。

 

評価の公表ページ(国土交通省) http://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000050.html